業務効率を上げたいのに、コスト削減ばかりが求められて、現場が疲弊してしまっていないでしょうか。
限られた人員や予算の中で応対品質を維持することは、多くのコールセンターが抱える共通の悩みです。
本記事では、自社運営と業務委託それぞれにおけるコスト削減の手法を整理したうえで、「受電数を増やす」という新たな視点から、コスト最適化とCX(顧客体験)の改善を両立するためのアプローチをご紹介します。
ぜひ自社の現場と照らし合わせながら、ムリなく実行できるヒントを探してみてくださいね。
なぜ今コールセンターのコスト削減が必要なのか
物価高が注目される昨今ですが、実際の現場では「維持」ではなく「削減」の方法を模索しているケースも多いのではないでしょうか。
ただし、コスト削減そのものを“目的”にしてしまうと、思うような成果には繋がりづらくなります。
あくまで削減は“手段”であって、本来の目的は「持続可能な現場運営」と「CX(顧客体験)の最大化」を実現することにあります。
そのためにも、今一度ムダを見直して、運営全体の効率化を目指していきましょう。
運営コストが増え続ける背景
運営コストが増加しているのは、単に物価高が原因というわけではありません。
- 人材不足
- 顧客応対の複雑化
といった背景も大きく影響しています。
これまで内製や既存の体制でカバーできていた部分に、新たなリソースや資金を投じる必要が出てきたことで、全体のコストも増えている状況なのです。
削減だけが目的ではない
どうしても「コスト削減=正解」と捉えがちですが、目先の費用を抑えることに意識が向きすぎると、本来しっかり予算を投じるべき部分が手薄になってしまいます。
コスト配分のバランスが崩れることで、現場全体の運用も不安定になり、結果的により厳しい予算管理を強いられたり、CXの低下を招いたりするリスクもあります。
大事なのは「削減すること」ではなく、「削減して生まれた余力を、必要な運営リソースに適切に投資すること」。
この視点を持つことで、無理のない改善サイクルを実現できるはずですよ。
コールセンターのコスト構造とは?
実際にコールセンターを運営していく中で、どんなコストがかかっているかを改めて洗い出してみましょう。
「自社運営」と「外部委託」では、費用構造が大きく異なるため、それぞれのケースについて整理しておきますね。
コストを見直す際には、どこにどれだけ費用がかかっているのかを比較することがとても大切です。
ぜひ自社の現場と照らし合わせながら、項目ごとの実際の金額を確認してみてください。
改善は、まず“現状を正しく把握すること”から始まります。帳票などを見ながら、ひとつずつ項目を確認していきましょう。
自社コストの内訳
自社でコールセンターを運営している場合、主に以下のような費用が発生します。
- 人件費:オペレーターの給与、採用コスト、育成・研修費用など
- システム費:受電対応で使用するソフトウェアやツールなど
- 光熱費:電気・水道・空調などのユーティリティ費用、備品類の消耗品など
- 通信費:電話回線の契約費、通話料など
これらの費用は多くが「維持費」として発生するもので、季節や運用状況によって変動することもあります。
特に規模の大きなセンターでは、人件費の割合が高くなる傾向にありますので、しっかり把握しておきたいですね。
外部委託の費用体系
一方で、コールセンター業務を外部に委託している場合は、契約形態によって費用が変動します。
- 月額固定型:月額で一定の料金を支払う方式
- 従量課金型:受電件数や対応時間に応じて変動する方式
まずは自社がどちらの契約形態を採用しているかを確認しましょう。可能であれば内訳まで把握しておくと、他社との比較や費用対効果の検証もしやすくなります。
なお、委託を請け負う企業によっては、月額固定型と従量課金型を併用している場合もあるので、気になる場合には確認してみてください。
コストの見直しは、今後の運営体制の最適化にもつながります。一つずつ丁寧にチェックして、改善につなげていきましょうね。
自社運営での主なコスト削減方法とデメリット
実際にかかっている項目を確認できたら、続いては実際に削減する方法について紹介します。
現状と改善した場合の比較検討がしやすいように、表などを用いるのがおすすめです。
コスト削減方法
以下は、自社でコールセンターを運営している場合に取り得るコスト削減の方法です。
あくまで一例ですが、現状や実行可能性と照らし合わせながら検討してみてくださいね。
- 自動化の導入:オペレーターを介さず、自動音声応答で問い合わせ対応を完結させる方法
- 離職率の低下:採用・育成にかかるコストを抑えるには、スタッフの定着率を高める
- 通信プランやシステムの見直し:電話回線や通信設備、契約中のシステムについてコストパフォーマンスを再検討する
- リモートワークの活用:出社する人員を減らし、交通費の削減やオフィススペースの縮小を検討する
- 外部委託の検討:自社で賄うのは外注費のみとなり、運営負担も減らせる
維持費を削るには、それなりの時間や労力が必要ですので、スピード感をもってコスト削減に取り組みたい場合には、外部委託するというのも1つの選択肢です。
自社運営から外部委託にすることで気にかける範囲が一気に少なくなるので、コスト管理もしやすくなります。
コスト削減をする上でのデメリット
先述した施策は「すぐに全てを実現できるわけではない」という点も理解しておきたいところです。
自動化を進めるにも初期投資が必要だったり、制度変更に伴って一時的にコストが上昇するケースも少なくありません。
また、変化を進める際には、スタッフとの調整や教育、業務プロセスの見直しといったマネジメントコストが発生することもあり、場合によっては当初の想定よりもコストが増える可能性もあります。
短期的に見ると負担が大きく見えるかもしれませんが、長期的には成果につながる施策も多いので、焦らず少しずつ取り組むことが大切です。
外部委託によるコスト削減と注意点
外部委託を行っている場合、契約内容の内訳が明確でないと、「どの業務にどれだけのコストがかかっているのか」を正確に把握するのが難しくなります。
可能であれば、契約時の書面を見直したり、委託先に確認をとったりして、費用の内訳を明らかにしておきましょう。現場の運営に関わるからこそ、こうした基本情報の把握はとても大切です。
また、見直すべきはコストだけではありません。対応品質や業務フローの課題を洗い出し、今後の改善にどうつなげるかという視点も忘れずに持っておきたいところです。
同じ金額を支払っていても、結果として顧客満足度が向上する委託先であれば、長期的には企業全体の利益に大きく貢献します。数字の裏にある“価値”も、しっかり見極めたいですね。
コスト削減の効果
自社でコールセンターを運営していたところから、外部委託に変更する場合は、以下のような効果が期待できます。
- 初期費用を抑えられる:委託先のシステムの準備費用などが多少かかるが、委託後スムーズに業務の開始が可能
- 運営費の削減:外部委託費のみで維持費がかからない
- 応対品質の向上:研修されたベテランオペレーターが対応
- 業務の効率化:細かな運営も委託可能
- CXの向上:慣れたオペレーターが対応することでCXも向上
自社で新しくオペレーターの育成をするよりも、既に研修を受けていたり経験豊富なオペレーターに対応してもらったりした方が品質面が向上します。
要望があれば委託側で改善してもらえるので、自社の負担も少なく済ませることが可能です。
外部委託の注意点
外部委託でコストを削減する場合には、自社運営とは異なる注意点があります。
まず、他社との連携になるため、業務のすり合わせが不十分だと認識のズレが生じやすくなります。「こうしてほしかったのに伝わってなかった…」ということも、起こり得ます。
また、改善提案をしたい場合も、自社であれば直接担当部署に伝えられますが、委託先では連絡を取る相手が現場の担当者とは限りません。
そのため、社内での伝言リレーのような形になってしまって、改善までに時間がかかることもありますし、伝達の途中で意図がずれてしまうリスクも出てきます。
委託ならではの強みもありますが、こうしたコミュニケーション面の工夫が重要となります。
コスト削減の先にある副次的な効果
「コスト削減は、あくまで目的ではなく手段」――これは冒頭でもお伝えしましたよね。
その上で是非実践してほしいのが「削減して生まれたリソースを、再投資する」という考え方です。
コストカットをすることで、資金的な余裕を多少なりとも生むことができたり、別の業務に配置できる人員の余裕が生まれたりといった副次的な効果が見込まれます。
その効果を活用して、流入を増加させるための新たな施策にチャレンジすることで、売り上げをさらに増加させることも可能になるでしょう。
以上のように、リソースを再投資することでで、コールセンターの枠を超えて、会社全体に良い循環が生まれていくはずです。
なお、コスト削減と聞くと「何かを我慢すること」とネガティブに捉えるかもしれませんが、実は業務を見直す絶好のチャンスでもあるんです。
大事なことは、「予算を削る」のではなく「適切な配分を考え直す」という意識を持つこと。
我慢や犠牲ではなく前向きな再構築と捉えることで、改善のモチベーションも保ちやすくなります。
こうした最適化の取り組みが、最終的にはCX(顧客体験)の向上にも繋がっていきます。
こうした再投資の視点を持つためには、「どの費用がどんな成果を生んでいるのか?」という観点での見直しが欠かせません。
費用対効果を正しく把握することで、ムダを省くだけでなく、“攻めの運用”への転換が可能になります。
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
▶ コールセンターの費用対効果を最大化するには?内製化・委託4パターンの違いと判断軸
受電数を増やしてコスト削減&CX向上する仕組みとは
コスト削減の王道として、「そもそも受電数を減らす」ことを想像する方もいらっしゃるかもしれません。
そのためにFAQを充実させたりAIチャットボットを導入したり、お客様に「自己完結していただく」仕組みを導入することもあるでしょう。
ただ、実は“受電数を増やす”アプローチこそが現場に余裕を生み出し、結果的に1件あたりのコストを下げる近道となるのです。
受電数を増やした方がいい理由
受電数を増やした方がいい理由として、以下2つが挙げられます。
- 自分に合う回答が欲しいお客様が増えるから
- 問い合わせ窓口が見つけられない仕組みが、お客様の不満につながるから
まず、AIによる自動化やFAQが充実すればするほど、「自分が欲しい回答が見つけられない」「その内容が自分に当てはまっているのかわからない」というお客様が出てきます。
電話窓口で個別に対応を行いお客様に納得していただくほうが、お客様の満足度が高まるでしょう。
また、最近のECサイトやFAQのページは、問い合わせ窓口を見つけることが非常に難しくなっており、お客様の不満となっています。
コールセンター側の受電数を減らすための仕組みが、実はお客様にとってはストレスになり、「このサイト(サービス)は使いづらい / 不親切だ」といった印象にもつながるのです。
以上の観点から、受電数は減らすのではなくむしろ増やす方が良い結果になると言えます。
受電数を増やすことによるメリット
受電数を増やしたほうがいい理由については先述した通りですが、受電数を増やすことによって得られるメリットについて、本章で以下の2つについて紹介します。
- 顧客満足度の向上につながる
- 売り上げ増加につながる
FAQやAIチャットボットを活用しつつも問い合わせ窓口にたどり着きやすい設計にしておきましょう。
お客様に個別対応をすることで一次応対率が向上し、オペレーターの折り返し負荷やクレーム対応コストを抑制できます。
同時に、直接の声を拾うことでCXの質が深まり、顧客満足度やリピート率の向上にも寄与します。
直接的にコストの削減にはつながらないかもしれませんが、結果的に1件あたりのコストを下げる近道となるでしょう。
まとめ
コールセンターの現場では、「とにかくコストを削減してほしい」という圧力がかかるかもしれません。
その結果、むしろ人員や予算のしわ寄せで応対品質が低下し、現場が疲弊してしまうという負のスパイラルに陥ります。
本記事では、自社運営と外部委託それぞれのコスト構造を整理し、単なる「削減」ではなく「削減して生まれた余力を再投資する」視点が持つ意義を解説しました。
加えて、これまでの常識を覆す“受電数を増やす”アプローチにより、FAQやAIチャットボットだけでは届かないお客様の声を直接拾い、顧客満足度や売り上げ増加を両立させる考え方もお伝えしました。
コスト削減も大事ですが、同時にお客様に満足していただいたり売り上げを増加させることが、長期的な会社の発展につながるはずです。
まずは自社の現状を正しく把握し、運用のムダを可視化したうえで、本記事の手法を段階的に試してみてください。
もし「自力では難しい」と感じたら、専門の委託先へのご相談もぜひご検討ください。
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執筆者情報

ベルシステム24・ランズエンド・オークローンマーケティングなどで勤務。
約35年の国内並びに海外(アメリカ・スペイン)コールセンター運営経験から、現場に即した生きた研修並びに事例を取り入れた実践的な研修を実施し、高い評価を得ている。
海外コールセンターの構築時に現地で身につけたマインド並びにチームビルディング等の研修も得意としている。
また、NHK杯全国放送コンテスト全国大会出場の経験からナレーター、司会業等も経験。
コールセンターに不可欠な人との繋がりを重視し、ビジネス上の人間力を養う心の通った<愛>のある研修を展開している。