コールセンター運営を見直すタイミングで、「内製化と委託、どちらが本当に効果的なのかな?」と迷うこと、ありますよね。
その答えを見つけるには、単にコストを比べるだけでなく、費用対効果の視点から全体像を見直す判断軸を持つことが大切です。
本記事では、内製化と委託を組み合わせた4つの運用パターンについて、それぞれの費用構造やKPI(成果指標)をわかりやすく整理しています。
この記事が、自社に合った運用体制を見極めるヒントになれば嬉しいです。最後までぜひご覧ください。
コールセンターの費用対効果を考える前に把握すべき基本構造
費用対効果をしっかり見極めるためには、費用構造とKPIの基本構造をチェックすることが重要ですね。
費用については、人件費やシステム費などの固定コストに加えて、教育や品質管理などの運用コストも発生します。
成果は、FCR(一次解決率)やCS(顧客満足度)といったKPIで判断します。同じコストをかけても、指標が良ければその分効果は高くなりますよね。
一方、KPIを把握できていないと、コストばかりがかかって成果が見えにくくなってしまいます。
つまり、費用とKPIの関係を正しく理解することこそが、コールセンター運営を見直す第一歩になるんです。
コールセンターにかかる主な費用項目3選
コールセンター運営にかかる費用は、大きく分けて次の3つに分類されます。
- 人件費および管理・マネジメント費用
- システム導入・ライセンス料およびインフラ費用
- 採用・研修コストおよび雑費(事務用品などの消耗品)
これらは、どのような運用スタイルを選択した場合でも、基本的に発生する代表的なコストです。
以降では、各運用スタイルにおいて具体的にどのような費用が発生するのか、順を追って解説していきますね。
人件費+管理・マネジメント費
コールセンター運営において、最も費用のウエイトを占めるのが、人件費およびマネジメント費用です。
具体的には、オペレーターの人件費に加え、SV(スーパーバイザー)の配置、応答品質のモニタリング、業務改善を目的とした定期的なミーティングなど、日々の運用に相応の人員と時間を要するのが実情です。
特に人材の流動性が高いこの業界においては、いかに効率的かつ安定したマネジメント体制を構築できるかが、最終的な費用対効果を大きく左右するポイントとなります。
システム導入・ライセンス+インフラ費
コールセンターの運営には、CRM(顧客管理システム)やCTI(電話連携システム)など、各種システム導入にかかる費用や、そのライセンス料が発生するのが一般的です。
さらに、通話回線の利用料に加え、PCやヘッドセット、ネットワーク機器といった、日々の業務を支えるインフラ環境の整備にもコストがかかります。
最近ではクラウド型のシステムを選ぶ企業も多いですが、初期費用が抑えられる反面、毎月の利用料が継続的に発生するため、導入時だけじゃなく長期的な運用コストまで含めた視点で判断することが大切です。
採用・研修コスト+雑費
コールセンターでは、求人広告や面接・選考にかかる採用コストに加え、導入研修における講師手配や資料作成等に関わる研修コストも発生します。
また、ロッカー・制服・文具などの消耗品を補充するための雑費も必要です。
特に人員の入れ替えが頻繁に発生する現場においては、こうしたコストの割合が高くなりやすく、長期的な運用コストを押し上げる要因となります。
さらに、拠点の規模が大きい場合や離職率が高い場合には、採用および研修にかかる負担が一層大きくなる傾向があります。
コールセンターの成果をどう測る?主なKPI指標
コールセンターのKPIは「運用効率」と「顧客評価」の2つが大きな軸となります。
ここからは、それぞれの軸で重視される具体的な指標と、その読み解き方をわかりやすくご紹介します。
運用効率に関する指標(FCR・応答率・放棄率・CPA・稼働率)
コールセンターの運用効率を適切に評価するには、複数のKPIを組み合わせて総合的に分析することが重要です。
代表的な指標には、FCR(一次解決率)、応答率、放棄率などがあり、これらを通じて顧客対応の品質や機会損失の有無を把握することができます。
さらに、CPA(成約単価)はコスト効率を、稼働率は人員の活用状況を測る指標として活用されます。
これらのKPIを単独で判断するのではなく、全体の関係性やバランスを踏まえて評価していくことで、コールセンター全体のパフォーマンスをより多角的に把握することが可能になりますよ。
顧客評価に関する指標(顧客満足度など)
コールセンターにおける顧客評価の指標として、代表的なものにCS(顧客満足度)とNPS(推奨度スコア)があります。
CSは、応対後のアンケートをもとに5段階で評価されるもので、オペレーターの対応品質や顧客対応の全体的な満足度を数値化するのに適しています。
一方、NPSは「このサービスを他者に勧めたいと思うかどうか」を0〜10点で評価し、顧客のロイヤルティや今後のリピート意向を測る指標として活用されます。
いずれの指標も、LTV(顧客生涯価値)や継続率と強く関連しており、コールセンターの費用対効果を把握するうえで欠かせないKPIです。
内製化・委託それぞれの「4パターン」比較と判断材料
コールセンターの運用体制は、内製化と委託の組み合わせによる4つの運用パターンに大別できます。
ここからは、それぞれの特徴とコスト・成果の違いを詳しく見ていきましょう。
どのパターンを活用することが、自社のコールセンターの費用対効果を最大化させられるのかを考えながら、お読みください。
運用パターン①:すべて内製化
コールセンター業務をすべて内製化することで、品質やコスト、運用体制を自社で細かくコントロールできます。
ただし、そのぶん管理負荷や人材確保の負担も大きくなります。
ここからは、内製化によるメリット・デメリットについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
メリット:ノウハウ蓄積、ブランドコントロール
内製化の最大のメリットは、対応履歴や顧客の反応といった実務上のノウハウを、自社内に蓄積できる点にあります。
その結果、PDCAサイクルを迅速に回せるほか、商品理解やオペレーターの応対力向上にも直結しやすくなります。
また、対応方針や言葉遣いなどのトーン&マナーも統一しやすく、顧客接点でのブランドイメージ構築が図りやすくなるのも内製化した場合の強みですね。
現場の声をすぐに反映できる柔軟な運営体制を築けるのも、内製化ならではの価値といえるでしょう。
デメリット:高コスト&高負荷、属人化リスク
内製化のデメリットとしては、採用活動や教育研修、システム導入にかかる初期・継続コストが増大しやすい点が挙げられます。
また、人件費やマネジメントの負荷も大きくなりやすく、想定以上に運用コストがかさむことも珍しくありません。
さらに、特定の担当者に業務が偏る「属人化」が進んでいる場合は、退職や異動によってノウハウが失われ、対応力が一時的に低下するリスクも考慮が必要です。
パターン②:一部内製+派遣スタッフ活用
コールセンター業務においては、一部を内製化して体制を維持しつつ、一部業務を派遣スタッフで補完するハイブリッド型の運用も有効です。
基幹業務や重要な対応は社員が担い、繁忙期や短期の増員が必要な場面では派遣人材を柔軟に活用することで、コスト変動にも対応しやすくなります。
ここからは、この運用パターンのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
メリット:フレキシブルな人員調整、内部連携
派遣スタッフを活用することで、業務量に応じた人員調整が可能となり、人件費の最適化および運用効率の向上が見込まれます。
基幹業務については自社のスタッフが対応すれば、応対品質やブランドイメージの一貫性を維持しやすくなる点も大きな利点です。
また、マニュアルの改訂やスクリプトの調整を自社主導で行えるため、現場の変化に柔軟に対応できる体制が整えやすいでしょう。
コスト・品質・柔軟性をバランスよく確保できる運用モデルとして、有効な選択肢となります。
デメリット:スキルのバラつき、教育コストの倍増
派遣スタッフを活用するにあたっては、教育コストや品質管理に対する追加の対応が求められます。
スキルにばらつきがあるため、安定した品質を維持するには、初期研修やOJTの実施が不可欠です。
また、自社スタッフと業務フローが異なる場合は、派遣スタッフ向けに個別の教育プログラムや管理方法を設計する必要があり、現場の負荷が高まる要因ともなり得ます。
このような運用上の煩雑さや調整にかかるコストは、派遣活用の明確なデメリットとして認識しておく必要があります。
パターン③:委託先のスタッフを社内に常駐
コールセンター業務を委託しながらも、委託先のスタッフを自社内に常駐させて対応する運用スタイルは、現場連携を重視する企業にとって有効な選択肢です。
ここからは、この運用モデルのメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット:外部ノウハウの活用、現場密着型
常駐型委託の最大のメリットは、柔軟な委託体制と社内メンバーとの一体感を両立できる点にあります。
委託先が現場に常駐することで、現場のノウハウを即座に活用でき、対応品質や業務効率の向上が期待されます。
また、情報共有や改善対応もスムーズに進めやすく、自社のトーンや方針に沿ったブランディングの実現も可能です。
専門性と連携の両方を重視する企業にとって、非常にバランスの取れた選択肢となるでしょう。
デメリット:責任の所在が曖昧、セキュリティ管理が難航
業務を委託先が担いながらも社内での運用となるため、責任の所在が曖昧になりやすく、トラブル発生時の対応や情報管理において課題が生じやすい点がデメリットです。
また、委託先と自社のセキュリティ基準が異なる場合、対応の難航や情報漏洩リスクが高まる可能性もあります。
とくに顧客情報を扱う業務においては、責任分担を明確化し、万全な体制整備を行うことが不可欠です。
パターン④:完全委託(アウトソーシング)
コールセンター業務をすべて外部に委託する完全委託(アウトソーシング)では、実務をBPOベンダーが担い、自社はKPIの管理や品質評価といった上流工程に専念できます。
業務負担を大幅に軽減できる点は魅力ですが、運用上の注意点もいくつか存在します。
完全委託のメリットとデメリットについて、具体的に確認していきましょう。
メリット:初期投資を抑え、高品質な体制がスピーディに構築可能
完全委託の最大のメリットは、自社における初期投資を大幅に抑えられる点です。
採用・研修・システム構築といった準備業務はすべて委託先が担うため、自社の負担を最小限に抑えつつ、短期間での運用開始が可能となります。
また、専用設備の導入も不要なため、コスト面でも優位性があります。
加えて、実績のあるベンダーを活用すれば、24時間対応や多言語サポートといった高度な運用体制もすぐに整備できるため、スピードとコストを重視する企業にとっては有効な選択肢です。
デメリット:現場感の欠如、ノウハウが社内に蓄積しにくい
完全委託のデメリットとしては、業務が社外で完結することにより、現場の温度感や顧客のリアルな声が社内に届きにくくなる点が挙げられます。
その結果、PDCAサイクルの自社内での運用が難しくなり、改善のヒントを逃しやすくなる可能性があります。
また、現場対応に関するノウハウも社内に蓄積されにくいため、将来的な内製化を見据える企業にとっては課題となるでしょう。
ただし、委託先との定例報告(週次・月次)やフィードバックの体制をしっかりと構築することで、顧客の声を一定レベルで集約・活用することは可能です。こうした情報共有の仕組みをどう設計するかが、完全委託を成功させる鍵となります。
どの運用でも費用に大差が出にくい3つの理由
コールセンターの運用方法は、全てを内製化したり、一部を内製化・一部を委託したりと、さまざまです。
そのため、どの運用方法を用いることで、最もコストを抑えられるのか・最も費用対効果を最大化できるのかを検討したくなるかもしれません。
しかしながら、費用構造の基本要素は共通しているため、費用に大きな差が出にくい傾向があります。
ここからは、どの運用モデルでもコストに差がつきにくい3つの理由について説明します。
理由1:人件費・システム費など基本構造はほぼ同じ
オペレーターの人件費や、CRM・CTIといったシステムにかかる費用は、どの運用形態においても必ず発生する基本的なコストであり、全体コストの中でも大きな割合を占めます。
また、モニタリングや応対評価、フィードバック体制など、品質管理に必要な仕組みも運用形態にかかわらず共通して求められるため、一定の管理コストは避けられません。
そのため、先述した4パターンのいずれを選択しても、基本的な費用構造に大きな違いは生じにくいのが実情です。
理由2:品質維持に必要な運用コストは共通
顧客対応の品質を維持するためには、スタッフ教育の実施や応対内容のモニタリング、マニュアルの整備・更新といった取り組みが不可欠です。
これらの業務は、内製化・委託を問わず、どのような運用体制においても共通して必要とされるものであり、継続的な運用コストとして発生し続けます。
そのため、どの運用モデルを選択しても、品質維持にかかる費用は一定以上の水準を維持する傾向にあり、大きなコスト差が生じにくいのです。
理由3:成果を左右するのは体制より「改善サイクル」
コールセンター運用における費用対効果を左右する要素は、「内製化か委託か」といった体制の違いそのものではなく、KPIをもとにしたPDCAサイクルの運用です。
応答率や顧客満足度といった指標に基づき、迅速に改善を重ねていけるチームほど、同じコストであってもより高い成果を生み出すことができます。
つまり、どの体制を採用するか以上に、限られた費用をどう有効活用するかが、成果の分かれ目となると言えます。
費用対効果を最大化するための判断軸と実践アクション
費用対効果を高めるには「指標管理」「顧客価値」「人材育成」の3つの軸で現状を整理し、継続的な投資ができているかを見直すことが改善の第一歩です。
ここからは、費用対効果を最大化するために押さえておきたい、具体的なアクションについて解説していきます。
アクション1:KPIをもとにしたPDCA体制の有無
KPIは週次・月次でダッシュボードに集約し、数値の変動要因を分析したうえで、対策の立案・検証・標準化までをPDCAで着実に回す体制を整備しましょう。
あわせて、各指標に対して責任者を明確にし、改善策が速やかに現場へ反映される仕組みが機能しているかを定期的に確認することが重要です。
さらに、KPIの異常値に対しては自動アラートを設定し、迅速な原因究明と一次対応を徹底することで、成果の安定化につながります。
アクション2:顧客満足度を収益につなげる仕組みづくり
アンケート結果やNPSから得た顧客満足度スコアは、BIツールと連携してLTV(顧客生涯価値)に変換しましょう。
リピート率やクロスセル率と掛け合わせて分析すると、より実態に即した顧客価値の把握が可能になります。
そのうえで、施策実行後にLTVがどれだけ改善したかを算出し、営業やマーケティングにかかったコストと照らし合わせて効果を「見える化」できれば、追加予算の獲得にもつながりやすくなります。
また、失注顧客を再獲得するためのコストと比較することで、現施策の妥当性をより明確に示すことも可能です。こうしたデータドリブンな評価が、組織内の理解と支援を得るうえでも有効です。
アクション3:教育・品質管理の継続的投資ができているか
新人研修が終了した後も、品質管理の一環としてモニタリングを継続的に実施し、ロールプレイやeラーニングを通じた教育と、マニュアル・FAQの定期的な更新が重要です。
対応品質に関する指標を「見える化」し、月次で改善点を現場にフィードバックすることで、業務の定着率や顧客満足度の向上が期待できます。
あわせて、将来的なキャリアパスを提示することで、オペレーターのモチベーション維持と離職リスクの軽減にもつながるでしょう。
【まとめ】コールセンターの費用対効果を決めるのは体制ではなく「運用力」
コールセンターの成果を左右する本質的な判断軸は、「内製化か委託か」といった表面的な選択ではなく、KPIをもとに顧客価値を高めながら、教育と品質に継続的な投資を行える“運用力”にあります。
どの体制を選んだとしても、FCRやCSといった指標を着実に改善していくための仕組みをつくり、現場でPDCAを高速で回す文化を根づかせることが成果への近道です。
限られたコストの中でも、運用次第で費用対効果は大きく変わるもの。だからこそ、短期的なコスト差だけに目を向けるのではなく、中長期的な人材育成やナレッジの蓄積も視野に入れた投資判断が求められます。
持続的な成長を実現するためにも、「成果に繋がる運用とは何か?」という視点を、常に持っておきたいですね。
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執筆者情報

ベルシステム24・ランズエンド・オークローンマーケティングなどで勤務。
約35年の国内並びに海外(アメリカ・スペイン)コールセンター運営経験から、現場に即した生きた研修並びに事例を取り入れた実践的な研修を実施し、高い評価を得ている。
海外コールセンターの構築時に現地で身につけたマインド並びにチームビルディング等の研修も得意としている。
また、NHK杯全国放送コンテスト全国大会出場の経験からナレーター、司会業等も経験。
コールセンターに不可欠な人との繋がりを重視し、ビジネス上の人間力を養う心の通った<愛>のある研修を展開している。