コールセンターのBCP対策、何から始める?業務継続に効く5つの具体策と進め方

突然の災害やシステムトラブルにより、コールセンター業務が停止してしまった場合、どこから復旧すべきか、そもそも業務ができない状況にどう対応すればよいのかと、不安を抱えている企業も多いのではないでしょうか。

コールセンターが機能しなくなると、顧客対応ができず企業としての信頼にも大きな影響を及ぼします

しかし実際には、限られた人員体制で運営している企業が多く、BCP(事業継続計画)対策にまで手が回らないというのが実情です。「まだ大丈夫」と後回しにしていると、不測の事態は突然訪れる可能性もあります。

コールセンターのBCP対策には一定のコストがかかることもありますが、特に“信用”に関わる部分については、万が一の際に大きな損失を生むリスクもあるため、事前の備えが極めて重要です。

本記事では、コールセンター業務におけるBCP対策の具体的な方法と、その選定ポイントをご紹介しています。

すべてを一度に整える必要はありません。まずは、できるところから一歩ずつ取り組んでみましょう。

コールセンターのBCP対策で取り入れられている主な手段

BCP対策には複数の手段がありますが、すべてを一度に導入する必要はありません。

自社の業務特性や体制に合わせて、取り入れやすいものから段階的に取り組むことが大切です。

本記事では、以下5つの対策について紹介します。

  1. クラウド型CTI・CRMの導入
  2. 在宅オペレーション体制の整備
  3. 複数拠点・分散配置の運用
  4. 業務マニュアル・トークスクリプトの標準化
  5. 外部委託(BPO)による業務継続

それぞれについて、「まずはここから」というスモールスタートのポイントも併せてご紹介していますので、無理のない範囲から実践してみてください。

①クラウド型CTI・CRMの導入

クラウド型のCTI(電話システム)やCRM(顧客管理システム)は、インターネット経由での運用が可能なため、オフィス以外の場所からでも顧客情報の確認や対応が行えます。

これにより、災害時や障害発生時でも業務の継続が可能になり、BCP対策として非常に有効です。

また、在宅勤務や外部委託先との情報連携も円滑に行えるため、非常時に限らず平時の業務効率化にも貢献します。さらに、クラウド上にデータが保管されていることで、障害からの復旧も迅速になり、物理的なトラブルの影響を最小限に抑えることができます。

データの自動バックアップやアクセスログの記録といったセキュリティ機能も備わっており、情報管理の面でも高い安全性が期待できます。

まずは一部の部署に限定してクラウド型CTIを導入し、通話ログの記録から始めることで、導入の第一歩を踏み出してみてください。

②在宅オペレーション体制の整備

在宅勤務環境を整備することで、自然災害やパンデミックといった予期せぬ事態においても、業務の継続が可能となります。

オフィスに依存しない体制を構築しておくことで、出社が困難な状況でも顧客対応を継続できるため、BCP対策の観点から非常に有効です。

また、柔軟な働き方の実現にもつながるため、人材確保や定着の面でもプラスに作用します。たとえば、子育て中の方や介護との両立を求める方にとって、在宅勤務は働きやすい環境を提供する手段です。

さらに、繁忙期における一時的な人員補充手段として、在宅スタッフの活用も視野に入れることができます。

まずは、「夜間のみ」「受電業務のみ」「1名体制から」といった限定的な条件での運用を試みるのが効果的です。業務内容や対応範囲をあらかじめ絞ることで、セキュリティ対策やイレギュラー対応も比較的スムーズに行えるようになります。

③複数拠点・分散配置の運用

災害や大規模障害に備えるうえで、業務拠点を1カ所に集中させる体制は大きなリスクを伴います。万が一、その地域で地震や台風、停電、大雪などの災害が発生し、出社不可となれば、業務全体が停止しかねません。

特に、コールセンターなど顧客対応業務を1拠点で運営している場合、電話がつながらないこと自体が、企業の売上や信頼に直接影響する可能性があります。

このようなリスクを軽減するためには、業務拠点を地理的に分散することが有効です。拠点を複数持つことで、1つの拠点が被災しても、他の拠点で業務継続が可能となります。

まずは、一部の業務を別拠点で実施したり、外部委託先へ一部業務を移管したりするといった取り組みを、段階的に行っていくことが有効です。

もし委託先が自社と同じ地域だったとしても、委託先が各地に拠点を構えている場合もあるため、「拠点を複数構えているか」「もしものときは別の拠点で対応してくれるか」という点は、事前に確認しておくと安心です。

④業務マニュアル・トークスクリプトの標準化

非常時にも安定した顧客対応を行うためには、業務マニュアルやトークスクリプトの標準化が欠かせません。

対応者によって品質にばらつきがあると、トラブル時に混乱を招きやすく、顧客の信頼を損なうリスクが高まります。

特に、災害時や緊急対応時には、急遽別部署や外部支援者が対応にあたるケースも想定されます。その際、簡易的な引き継ぎだけでは、正確な対応が難しく、クレームにつながるかもしれません。

標準化されたトークスクリプトやマニュアルがあれば、誰が対応しても一定の品質を保てますし、引き継ぎや新人教育も効率化でき、教育時間や指導コストの削減も可能なため、急な人員交代にも柔軟に対応できる体制が整うでしょう。

加えて、ブランドの統一感を維持できることから、平常時にも役立ちます。

まずは「よくあるお問い合わせトップ5件」からテンプレートを作成するなど、小さなステップから取り組むのがおすすめです。段階的に情報を整えていくことで、自然と全体の品質が底上げされていきます。

⑤外部委託(BPO)による業務継続

災害や障害発生時、自社のみで顧客対応を継続することには限界があります。こうした非常時にも最低限の対応体制を維持する手段として、有効なのが外部委託の活用です。

委託先と連携することで、業務の一部または全体を迅速にカバーでき、BCP対策としての有効性が高まります。特に、BCP対応を強みとするBPO事業者であれば、代替拠点の活用や即時の体制構築が可能となり、自社だけでは難しい柔軟な対応が実現可能です。

また、業務マニュアルやトークスクリプトの整備が進んでいれば、委託先への業務移管もスムーズに行うことができ、共有された情報をもとに一定水準の対応が可能となり、品質のばらつきも防げます。

導入の第一歩としては、「1席のみ」「夜間のみ」「一次受付のみ」などの限定的な委託から始めるのが現実的です。状況に応じて委託範囲を段階的に拡大しながら、体制を整備していきましょう。

自社のコールセンターに合ったBCP対策の選び方

BCP対策の主な手段は数多くありますが、 「結局自社は何を選べばいいのか?」という疑問が湧いてくるのではないでしょうか?

そこで先程紹介した手段ごとに、「こんな企業に向いている」「この点が課題になる」といった判断材料について紹介します。

コールセンターの内容によって向き不向きは多少なりともあるので、課題になる点についても確認していきましょう。

手段 向いている業務 課題になりうること
①クラウド型CTI・CRMの導入 保険、金融、不動産、通信販売など、顧客情報・対応履歴を業務で必ず参照する業務 既存のオンプレ型システムとの“連携切り替え”に手間とコストがかかったり、準備のための投資が発生する
②在宅オペレーション体制の整備 メーカーやお客様相談室、問い合わせ窓口など対応内容が定型化されている/対応範囲やフローがルール化されている業務 準備のための投資やセキュリティ対策・勤怠管理・モチベーション管理などのマネジメント面が難しい
③複数拠点・分散配置の運用 テレビ通販、EC受注センター受注・売上に直結するセンター/公共・インフラ・医療のような“止められない”業務 拠点間での「システム連携」や「教育の平準化」が前提になるため、設計が複雑化しやすい
④業務マニュアル・トークスクリプトの標準化 契約関連のことや質問が少ないなど、複数名で対応する業務/短期雇用や新人対応が多い業務/FAQベースで対応できる業務 準備のための投資やメンテナンスの手間、現場の「形骸化リスク」
⑤外部委託(BPO)による業務継続

※委託先企業が要望に応じて柔軟に対応(業務範囲、対応時間、曜日など)してくれるため、1度相談してみてください。

日頃から、委託先も自社もスキルを保持しておく必要があるり、スキルの平準化が求められる(仮に委託先が都合によりセンターを一部クローズしなければならなくなった際に、引き継げるように。)

いずれの方法を導入するにしても、手間や準備が必要にはなりますが、今整備をしておくことで非常時の対策につながるだけではなく、普段の業務効率化も可能です

例えば、クラウド型CTIやCRMを導入すれば在宅勤務や委託先との連携で活用ができますし、マニュアル・トークスクリプトを標準化すれば新人教育に使うことができ、結果として応対品質の向上も見込めます。

BCP対策としてでなく、業務改善として取り組みはじめると社内の協力も得られて円滑に物事を進められます。

業務改善の一環として取り組む場合でも、スモールスタートではじめ、少しずつ業務範囲を広げていってください。

BCP対策の実施で押さえるべき3つのポイント

BCP対策と聞くと、大規模な準備や専門知識が必要だと感じるかもしれませんが、実際には「これだけは押さえておきたい」という基本的なポイントを押さえることで、スピーディーに取り組むことができます。

どの手段を選択する場合でも、まずは以下の3つのステップを意識しておくことで、非常時にも慌てずに対応できます。

  1. 業務の棚卸
  2. オペレーションの可視化・標準化
  3. 社内外との連携・情報共有・訓練体制の構築

BCP対策の実効性が大きく向上しますので、しっかりと確認をして、BCP対策をする際に活用してみてください。

①業務の棚卸

まずは、自社の業務を洗い出し、「止めても支障が少ない業務」と「絶対に止められない業務」に分類しましょう

災害や障害が発生した際、全ての業務を同時に継続することは現実的ではありません。重要なのは、復旧の優先順位を明確にすることです。

例えば、「受注処理は最優先で継続する」「問い合わせメールは翌日対応でも問題ない」といった判断基準をあらかじめ定めておくことで、限られた人材・時間を効率的に活用することができます。

このような業務の棚卸しを行っておけば、万一の際にも混乱を最小限に抑えることが可能になります。

②オペレーションの可視化・標準化

BCP対策では、「誰が担当しても同じ手順で実行できる状態」を整えておくことが不可欠です。つまり、業務の属人化を排除し、標準化と可視化を徹底することが重要です。

非常時には、通常の担当者が不在になるケースも想定されるため、代替要員でも問題なく業務が遂行できるよう、手順書やマニュアルを整備し、再現性の高い状態をつくっておく必要があります。

属人化された業務や非言語での引き継ぎは、以下のようなリスクをはらんでいます。

  • 属人化のリスク例: 災害発生時、主要な管理者が出勤できず、業務指示が出せない状況となり、現場全体が停止。
  • 非言語引き継ぎのリスク例: メモだけで対応内容を伝えたところ、担当者が変わり、背景説明がないまま誤った対応を実施。結果として顧客対応でのトラブルが発生。

これらの事態を防ぐためにも、誰が見ても理解できる形式でマニュアルを整備し、共有することが重要です。緊急時こそ、「伝わるはず」が通用しないことを前提に、標準化を進めていきましょう。

③社内外との連携・情報共有・訓練体制の構築

BCP対策の要となるのが、社内外との迅速な連携体制の構築です。災害やシステム障害といった緊急事態では、初動対応のスピードが事態の深刻度を大きく左右します。

そのため、「誰が・いつ・どのように動くのか」といった指示系統や実行フローを事前に整備しておくことが非常に重要です。

特に、「BCPの発動判断(どのレベルでBCPを実施するか)」を明確にしておくと、初動の遅れを防げます。加えて、外部委託先との連携ルールも事前に整えておくことで、緊急時でも迷いなく対応ができます。

平時から、部署間・委託先との情報共有体制を整えておけば、非常時もその延長でスムーズな連携が可能です。さらに、定期的な訓練やロールプレイによるシミュレーションを行うことで、実効性を高めることができます。

なお、万が一自社だけでの対応が難しい場合は、外部委託による人的リソースの確保も一つの手段として検討してみてください。

BCP対策としてコールセンターの外部委託を検討するのがおすすめ

ここまで、BCP対策の具体的な手段や検討のポイントについてご紹介してきました。ただ、自社だけでこれらすべてを実行するのは難しいと感じていらっしゃるかもしれません。

BCP対策は、既存の業務体制に新たな仕組みを取り入れる必要があるため、現場への負担や実行のハードルが高くなりがちです。

そこでご提案したいのが、BCP対策の外部委託です。

外部委託を活用すれば、現在の社内体制を大きく変更することなく、必要な部分に新たな仕組みを「追加する」形でBCP対応が可能になります。体制を「変える」のではなく、「加える」ことで、現場の負担を最小限に抑えつつ、リスク分散を図ることができます

「外部委託といっても、まとまった業務量が必要なのでは?」と思われるかもしれませんが、ご安心ください。

弊社ドゥファインでは、1席からのご依頼にも対応可能ですし、状況に応じて席数の増減にも柔軟に対応いたします。

まずは小さく始めて、必要に応じて拡大する。そんなBCP対策をお考えの際は、ぜひ一度ご相談ください。

BCP対策を強化した企業の事例

ドゥファインがご支援させていただいた企業様の事例をご紹介します。

ある大手企業では、コロナ禍の緊急事態宣言を受けて急遽テレワーク体制へ移行。しかし、出社制限によりオフィスに誰もいなくなったことで、代表電話の応対ができず、取引先や顧客との連絡が断たれるリスクに直面しました。

社内で即座に人員を再配置する余裕もなく、業務継続が危ぶまれるなか、当社ドゥファインが代表電話の一次受付を代行。電話内容を用件ごとに分類し、必要に応じて各担当者へ取り次ぐ体制を構築しました。

この対応により、在宅勤務下でも代表電話を止めることなく社外との接点を維持。出社できない状況でも顧客対応を継続でき、BCP対策として大きな効果を発揮しました。

まとめ

コールセンター業務におけるBCP(事業継続計画)対策は、企業の信頼維持と顧客満足の観点から、もはや“備え”というより“必須”といえる取り組みです。とはいえ、自社のリソースだけですべてを整備するのは容易ではなく、多くの企業がその第一歩でつまずいてしまいがちです。

しかし、BCP対策に必要なのは、一気にすべてを完璧に整えることではなく、「小さく始めて、段階的に進めること」です。

本記事でご紹介したように、クラウドシステムの導入、在宅体制の整備、拠点分散、マニュアルの標準化、そして外部委託といった手段の中から、自社の業務に合ったものを見極め、まずは手が届く範囲から取り組んでみてください。

また、非常時に備えるだけでなく、これらの対策は日常業務の効率化や品質向上にも直結するものです。

BCP対策は「有事のための準備」ではなく、「普段から使える仕組み」でもあります。

そして、自社だけでの対応が難しい場合には、外部委託という柔軟な選択肢も視野に入れることをおすすめします。

まずは、BCP対策を「業務改善の一環」として始めてみてはいかがでしょうか。「備えあれば憂いなし」、今こそ行動に移すタイミングです。

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